理論株価の計算式は何?Excelでサクッと説明!

理論株価の計算式は何?Excelでサクッと説明!
理論株価の計算式を知りたいときはないでしょうか。

けど、そんな中で悩むことは、

・理論株価の計算式がすぐに出てこない
・Excelにどの数式を入れればいいか分からない
・配当割引モデルとPERのどちらを使えばいいか迷う

ですよね。

今回はそんなお悩みを解決する

・理論株価の計算式とExcelでの求め方(配当割引モデル・PER)

についてまとめます!

完成イメージ

理論株価とは、会社の利益や配当をもとに「この株はいくらが妥当か」を計算した値です。
代表的な計算式は次の2つです。
・配当割引モデル(ゴードンモデル)= 予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率)
・PER方式= 予想EPS × 目標PER
今回は
・6社のデータからExcelで理論株価をサクッと計算する方法
をゴールにします。
数式を入れておけば、前提の数字を変えるだけで理論株価が自動で計算されます。

完成イメージ
上の画像が完成形です。G列の理論株価(配当割引)とH列の理論株価(PER)が数式で自動計算され、配当割引モデルが使えない企業は「計算不可」と表示されます。

なお、成長率が要求リターン以上だと値がマイナスや異常になる点の対処もあわせてご紹介します。
毎回の計算をラクにするVBAでの一括計算や、うまくいかないときの対処法(トラブルシュート)も見ていきましょう。

STEP1. 理論株価の計算式を確認する

理論株価とは、会社の利益や配当をもとに「この株はいくらが妥当か」を計算した値です。
計算式はいくつかありますが、実務でよく使うのは次の2つです。

モデル 計算式 向いている企業
配当割引モデル(ゴードンモデル) 理論株価 = 予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率) 配当を出している企業
PER方式 理論株価 = 予想EPS × 目標PER 配当が少ない/出していない企業

配当割引モデルは、これからもらう配当を現在の価値に割り引いて足し合わせる考え方です。
1株配当が一定の割合(成長率)で伸び続けると仮定した形が、ゴードンモデルです。
一方のPER方式は、利益に「市場が何倍まで買ってよいか」という倍率をかけるだけのシンプルな式です。
どちらも前提の数字さえそろえば、Excelの数式1本で計算できます。

STEP2. 元データを用意する

まずは理論株価を計算したい企業のデータを用意します。
今回は6社を比較する表を作りました。
A列が企業名、B列が予想EPS、C列が配当性向、D列が予想1株配当、E列が成長率g、F列が要求リターンrです。
G列(理論株価・配当割引)とH列(理論株価・PER)は、このあとの数式で埋めていきます。
右のほうに小さく目標PERの欄を作り、市場平均のイメージで15と入れておきました。
このセルが前提の数字になるので、あとから変えれば理論株価もすぐ計算し直せます。
C列・E列・F列は%、B列・D列・G列・H列は円です。
単位が混ざっているので、表示形式で見分けられるようにしています。
%にしたいセルは Ctrl+Shift+% で一気にパーセンテージ表示にできますよ。
理論株価を計算する元データの表

下の表をコピーして、Excelのシートに貼り付けるとそのまま試せます。

企業 予想EPS 配当性向 予想1株配当 成長率g 要求リターンr 理論株価(配当割引) 理論株価(PER)
アルファ食品 120 0.4 0.03 0.07
ベータ電機 200 0.3 0.05 0.08
ガンマ商事 80 0.5 0.02 0.06
デルタ運輸 150 0.35 0.02 0.07
イプシロン製薬 90 0.2 0.09 0.07
ゼータ建設 60 0 0.04 0.06

※ 数式で求める列は空にしています。すでに値が入っている列はそのまま残して試せます。

STEP3. 予想1株配当を求める(D列)

配当割引モデルには「予想1株配当」が必要です。
予想1株配当は「予想EPS × 配当性向」で求めることができます。
D2セルを選び、次の数式を入力します。

=ROUND(B2*C2,0)

B2が予想EPS、C2が配当性向です。
1株あたりの配当は円単位で見たいので、ROUNDで小数を四捨五入しています。
どのセルに入れるかは、こちらの画面を参考にしてください。
予想1株配当の数式を入力する画面
その数式をD2セルからD7セルまでコピーします。
D列に予想1株配当が入りました。
アルファ食品なら 120 × 0.40 = 48円 です。
デルタ運輸は 150 × 0.35 = 52.5 ですが、ROUNDで53円になっています。
数式なので、予想EPSや配当性向を変えても自動で追従します。
カンタンですね。
予想1株配当を計算した結果

STEP4. 配当割引モデルで理論株価を求める(G列)

次は本題の配当割引モデル(ゴードンモデル)です。
計算式は「予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率)」です。
G2セルを選び、次の数式を入力します。

=IF(F2<=E2,"計算不可",ROUND(D2/(F2-E2),0))

D2が予想1株配当、F2が要求リターン、E2が成長率です。
分母の「要求リターン − 成長率」がマイナスになると理論株価もマイナスになってしまうため、IFで先に止めています。
どのセルに入れるかは、こちらの画面を参考にしてください。
配当割引モデルの数式を入力する画面
その数式をG2セルからG7セルまでコピーします。
G列に理論株価(配当割引)が入りました。
アルファ食品なら 48 ÷(0.07 − 0.03)= 48 ÷ 0.04 = 1,200円 です。
ベータ電機は 60 ÷(0.08 − 0.05)= 2,000円 になりました。
イプシロン製薬は成長率9%が要求リターン7%を上回っているため、「計算不可」と表示されています。
ゼータ建設は配当性向が0%なので、理論株価も0円になっています。
この2社のように、配当割引モデルがなじまない企業もあります。
こうした例外を数式で自動的に見分けられるのがポイントです。

POINT

配当割引モデルは 予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率) の1本です。
成長率が要求リターン以上(g ≧ r)だと、値がマイナスや異常になります。
そこで =IF(F2<=E2,”計算不可”,…) で先に止めています。
配当を出していない企業は分子が0になるので、このモデルではなくPER方式を使いましょう。

配当割引モデルで理論株価を計算した結果

STEP5. PERで理論株価を求める(H列)

もう1つの方法が、PERを使うやり方です。
計算式は「予想EPS × 目標PER」です。
H2セルを選び、次の数式を入力します。

=ROUND(B2*$K$1,0)

B2が予想EPS、$K$1がさきほど入れた目標PER(15)です。
$K$1 と絶対参照にしているのがポイントで、H7までコピーしても目標PERのセルがずれません。
どのセルに入れるかは、こちらの画面を参考にしてください。
PERで理論株価を求める数式の入力画面
その数式をH2セルからH7セルまでコピーします。
H列に理論株価(PER)が入りました。
アルファ食品なら 120 × 15 = 1,800円 です。
配当割引モデルでは「計算不可」だったイプシロン製薬も、PER方式なら 1,350円 と計算できます。
配当を出していないゼータ建設も 900円 になりました。
このように、配当割引モデルが使えない企業はPER方式で補うのが実務的です。
PERで理論株価を計算した結果

STEP6. 2つの方法の使い分け

配当割引モデルとPER方式は、見ているものが違います。
配当割引モデルは「配当」、PER方式は「利益」に注目した式です。
どちらを使えばいいか迷ったら、次の表を目安にしてください。

指標 計算式 見ているもの 向いている場面 注意点
配当割引モデル(ゴードンモデル) 予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率) 配当 配当を安定して出している企業 g ≧ r だと計算できない/無配企業は使えない
PER 予想EPS × 目標PER 利益 無配でも利益が出ている企業 目標PERの置き方で結果が大きく変わる
PBR 1株あたり純資産(BPS)× 目標PBR 純資産 資産が重い企業・金融業 利益が出ていなくても使える

2つの違いを、観点ごとに整理すると次のようになります。

観点 配当割引モデル PER方式
もとにする数字 配当・成長率・要求リターン EPS・目標PER
配当がない企業 使えない(0円になる) 使える
成長率が高い企業 g ≧ r で異常値になる 使いやすい
向いている企業 配当重視の成熟企業 利益は出ている幅広い企業

まとめると、配当が安定している成熟企業は配当割引モデル、無配や成長途中の企業はPER方式が向いています。

STEP7. VBAで一括計算する

件数が多かったり、毎月同じ計算をしたりするなら、VBAで一括計算するのがおすすめです。
Alt+F11でVBAエディターを開き、標準モジュールに次のコードを貼り付けます。

Sub CalcTheory()
    Dim r As Long, lastRow As Long, per As Double
    per = Cells(1, 11).Value
    lastRow = Cells(Rows.Count, 1).End(xlUp).Row
    For r = 2 To lastRow
        Cells(r, 4).Value = Application.Round(Cells(r, 2).Value * Cells(r, 3).Value, 0)
        If Cells(r, 6).Value > Cells(r, 5).Value Then
            Cells(r, 7).Value = Application.Round( _
                Cells(r, 4).Value / (Cells(r, 6).Value - Cells(r, 5).Value), 0)
        Else
            Cells(r, 7).Value = "計算不可"
        End If
        Cells(r, 8).Value = Application.Round(Cells(r, 2).Value * per, 0)
    Next r
End Sub

実行すると、予想1株配当・理論株価(配当割引)・理論株価(PER)がまとめて計算されます。
成長率が要求リターン以上の会社は、自動で「計算不可」になります。
ボタンに登録しておけば、クリック1つで毎回の計算が完了します。

タカヒロ

タカヒロ
「Cells(r, 7)」の 7 はG列という意味です。
番号だけ見ると分かりにくいので、4=D、7=G、8=H のように列番号をメモしておくと読みやすくなりますよ。

うまくいかないときの対処法(トラブルシュート)

実際に試すと、思ったようにいかないこともあるかもしれません。
よくあるつまずきと対処法をまとめました。

症状 原因 対処
理論株価がマイナスや異常な値になる 成長率gが要求リターンr以上(g ≧ r)になっている =IF(F2<=E2,”計算不可”,…) で先に判定する。成長率の前提も見直す
理論株価が #DIV/0! になる 「要求リターン − 成長率」がちょうど0になっている IFの条件を F2<=E2 にして0のときも止める/=IFERROR(式,”計算不可”) で包む
理論株価が0円になる 配当を出していない企業で配当割引モデルを使っている 分子の配当が0です。無配企業はPER方式で計算する
%と円が混在して桁がおかしい %の列に 0.03 ではなく 3 と入力している %の列は小数(0.03)で入力し、表示形式をパーセンテージにする
予想EPSがマイナスになる 赤字企業のデータを使っている PER方式もなじみません。PBRなど別の指標を検討する

関数の説明

今回使った関数の概要です。
どれもよく使う関数なので、違いを押さえておきましょう。

ROUND関数(ラウンド)

書式 =ROUND(数値, 桁数)
できること 数値を指定した桁数で四捨五入します。
戻り値 四捨五入した数値
こんなときに 理論株価や配当を円単位(整数)で見たいとき。=ROUND(D2/(F2-E2),0) のように使います。
注意 見た目だけを丸めたいならROUNDではなく表示形式を使います。ROUNDは値そのものを変えます。
=ROUND(B2*C2,0)

IF関数(イフ)

書式 =IF(論理式, 真の場合, 偽の場合)
できること 条件に合っているかで、返す値を切り替えます。
戻り値 条件が真なら「真の場合」、偽なら「偽の場合」
こんなときに 成長率が要求リターン以上(g ≧ r)のとき「計算不可」と表示したいとき。
注意 条件を F2<=E2 と「以下」にすると、g=r で #DIV/0! になるケースも同時に防げます。
=IF(F2<=E2,"計算不可",ROUND(D2/(F2-E2),0))

IFERROR関数(イフエラー)

書式 =IFERROR(値, エラーの場合の値)
できること 値がエラーのときに、代わりの値を表示します。
戻り値 エラーでなければその値、エラーなら指定した値
こんなときに 割り算の #DIV/0! を「計算不可」や空欄にしたいとき。
注意 エラーを隠すだけなので、元の計算が正しいかは別途確認しましょう。
=IFERROR(D2/(F2-E2),"計算不可")

完成

G列に理論株価(配当割引)、H列に理論株価(PER)が入りました。
同じ企業でも2つの方法で値が違うのが分かりますね。
配当割引モデルが使えない企業は「計算不可」、無配企業は0円になりました。
こうした例外も数式で自動的に見分けられるのがExcelのよいところです。
思ったとおりに動きましたか?
理論株価を計算した完成表

さいごに

いかがでしょうか。

今回は、

・理論株価の計算式とExcelでの求め方(配当割引モデル・PER)

についてまとめました。

理論株価は、
配当割引モデル:予想1株配当 ÷(要求リターン − 成長率)
PER方式:予想EPS × 目標PER
の2本で求められます。
成長率が要求リターン以上になる企業はIFで「計算不可」にしておくと、変なマイナス表示を防げます。
まずは今回のサンプル表で、ぜひ一度試してみてください。
前提の数字を変えるだけで理論株価がすぐ計算できるので、銘柄の比較がぐっとラクになりますよ。
また、他にも便利なExcelの時短テクニックがありますので、よろしければご参照頂ければと思います。

ぜひ試してみてください。



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